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フランス核実験被害者訴訟:ポリネシアで4月27日に最終弁論

フランス核実験で地元採用労働者として働いていたポリネシア人元労働者が、被曝により健康被害を受けたとしてフランス政府に損害賠償を求めて2008年5月に起こした初の裁判の最終弁論*が、2009年4月27日にパペエテ地方裁判所で行なわれます。日本と違って、フランスの裁判では、最終弁論はこれまでの審議全体を総括し、原告・被告双方の主張を最終的に提出する裁判のクライマックスとして非常に重視されています。判決にも少なからぬ影響を与えると言われています。判決は、最終弁論の1、2ヶ月後に言い渡される予定です。

■太平洋で行われた核実験の被害者を記憶に留めるためにパペエテに建設した記念碑の周りで式典を行う「モルロアと私たち協会」の面々。帽子をかぶっているのがジョン・ドゥーム事務局長、その向かって右3人目がローラン・オルダム会長。全員が協会のロゴの入ったTシャツを着ている■                                                           
■太平洋で行われた核実験の被害者を記憶に留めるためにパペエテに建設した記念碑の周りで式典を行う「モルロアと私たち協会」の面々。帽子をかぶっているのがジョン・ドゥーム事務局長、その向かって右3人目がローラン・オルダム会長。全員が協会のロゴの入ったTシャツを着ている■

フランス核実験の健康被害に対する損害賠償請求訴訟は、フランス本国ではすでに400件以上行われており、08年8月現在までに24件の勝訴が確定しています。被告の国側は、これまで地方裁判所で敗訴するたびに控訴してきましたが、2008年11月に国防省が核実験被害者補償法案を提出すると発表してからは控訴をひかえています。

ポリネシア人元労働者が起こした訴訟で判決が出るのは、今回が初めてです。被害者が軍人以外の労働者の場合、補償は一般的な労災補償の形を取ります[1]。今回の訴訟の原告は、モルロア核実験場の元労働者8名(うち生存被害者3名、被害者の遺族5名)で、うち4人が白血病を、1人が悪性リンパ腫、3人が胸膜や肺などその他のガンを罹病しています。フランスの職業病リストでは、被曝労働によるガンについて、白血病と原発性気管支肺ガン、骨肉腫が認められています[2]。原告側弁護士は、フランスのアスベスト被害者を全面勝訴に導いた辣腕弁護士として知られ、本国の核実験被害者訴訟の原告側弁護士を担当してきたJ.-P. テッソニエール弁護士。

パペエテ地方裁判所は、1年近い審議を経た裁判の締めくくりを記す今回の最終弁論ために、400人の傍聴席のある最大の法廷を用意しています。当日は、元労働者やその家族、友人、そして運動を支えてきたモルロアと私たち協会(Association Moruroa e tatou)などの市民団体やマオヒ・プロテスタント教会、オスカー・テマル仏領ポリネシア大統領[3]らがこの席を埋め尽くすと見られています。モルロアと私たち協会は、裁判所に対して「この歴史的瞬間を記録するために、当日のもようをビデオ録画することを許可すべきだ」と要求しましたが、裁判所はこの要請を拒否しました**。

モルロアと私たち協会は、そのコミュニケで次のように述べています。

フランスは、これまで何十年もの間、ポリネシアの被害者に核実験は無害だと嘘をついてきた。さらに、2008年7月には、核実験関連の公文史料を永久に非開示とする決定を行った。被曝による病気は被害者やその家族を苦しめ続け、若くして未亡人となった被害者の妻は女手ひとつで子供を育てるほかなかった。しかし、ポリネシアの被害者はいま、フランスに対して真実を明らかにし、核実験がもたらした損害の賠償を行うことを迫っている。他の被害者も訴訟に向けた準備を進めており、書類が整い次第、続々と提訴に踏み切る予定だ。

今回の判決は、すべてのフランス核実験被害者、なかでも身を護る術もないままフランスの核による侵略を受けたサハラ砂漠やポリネシアの小さな民にとっての希望であり、国内外に大きな反響を巻き起こすに違いない。核保有国が被害者への責任を取らないまま無罪放免になることは決してないことを、世界中の核実験被害者が知ることになるだろう。

支援市民団体は、この日パペエテ市内で大規模なデモを計画しており、マスコミを通してフランス本国や海外にも伝えられると見られています。

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[1] 軍人の場合は傷病軍人年金の形。
[2] 対象は「X線、あるいは自然または人工放射性物質その他の粒子線の作用に曝露するすべての労働」 (Régime général Tableau N˚6 «Affections provoquées par les rayonnement ionisants», Tableaux de maladies professionnelles du régime général de la sécurité sociale)
[3] テマル大統領自身もモルロア核実験場の元労働者。
【訂正とお詫び】
*  当初「4月27日に初の判決が言い渡される」とお知らせしましたが、上記のように「4月27日に初の裁判の最終弁論が行われる」の間違いでした。(09.03.30)
** 当初「裁判所は、この歴史的瞬間を記録するために、当日のもようをビデオ録画するとしています。」とお知らせしましたが、事実は上記の通りでした。(09.06.28)
以上、お詫びして訂正させていただきます。

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