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ポリネシア人元核実験労働者補償訴訟で初の判決:原告8人中1人に300万FCFP(約336万円)の賠償のみ

ポリネシアでのフランス核実験で被曝して受けた健康障害への労働災害申請不認定の取り消しを求めてポリネシア人元核実験労働者8人(うち5人はすでに死亡)が起こした初めての裁判で、パペエテ地方労働裁判所は、原告のなかのすでに死亡している1人について、その3人の成人の子供に1人当たり100万CFP(太平洋フラン。約112万円)の賠償を支払うよう、雇用主であったフランス原子力庁(CEA)に命じる判決を下しました。その他の原告については、4人について医学的鑑定を行うことを命じましたが、他の3人については請求を棄却しました。

09年6月25日朝、判決が言い渡されるパペエテ労働裁判所に集まった原告と支援の元核実験労働者たち(写真はtahitipresse.pfより)
09年6月25日朝、判決が言い渡されるパペエテ労働裁判所に集まった原告と支援の元核実験労働者たち(写真はtahitipresse.pfより)

パペエテ労働裁判所は、今回の判決について異例の声明を発表し、「8名の原告の職業病認定は、労働災害に関するポリネシア法の適用に掛かる厳密に法律上の理由により、提訴を受理できないと判断した」と述べました。これは、ポリネシアの労災認定基準では、労災申請期限が2年とされていることにもとづいています。今回の裁判では、この点が最大の争点になっていましたが、労災制度が若干異なるとはいえ、フランス本国では「放射線障害は数十年後に発病する場合がある」として、申請を認め、労災不認定の取り消しを命じた判決が最高裁であるコンセイユ・デタで出ており、すでに判例として確立しています。

パペエテ労働裁判所は、唯一1人の原告について、「原子力庁の責任は、雇用者として結果の安全契約義務に違反したことにある」とし、原告の遺族である3人の成人の子供の「精神的苦痛」に対して、1人100万CFP(約112万円)の賠償を支払うよう命じました。

判決では、他の2人の原告について、労災申告期限を過ぎているので「時効」が成立しているとして、訴えを棄却。また、他の原告1人の遺族について、「証拠不充分」として訴えを却下しました。

残りの原告4人について、裁判所は「罹患した疾病が放射線被曝によるものかどうかに関する専門家による鑑定」を命じ、国のガン専門家に鑑定を委託した上で、その結果を待って判決を行うとしました。

「人種差別の判決」

判決後の記者会見で、原告側弁護士の1人、ノフェール弁護士は「私たちの目標が、一部とはいえ、達成されたのですから、勝訴であることは間違いないと思います。補償金の支払いを命じる判決が出たのですから」と語りました。

しかし、モルロアと私たち協会のローラン・オルダム会長は、「フランスに尽くした父親の価値が100万フランにしか値しないのでしょうか? フランス本国ですでに出ている判決に比べて、あまりにも低い評価です。この判決は人種差別に当たるのではないでしょうか?」と、厳しく批判しました。

モルロアと私たち協会のジョン・ドゥーム事務局長は、「核実験が始まってから現在まで、ポリネシアの労働法は一度も改正されていません。ポリネシア議会はやるべきことをしてこなかったのです。パリでではなく、このポリネシアでその作業をしなければなりません」と語りました。

モルロアと私たち協会は、この日の夜、フランスの国民議会で審議される「核実験被害者補償法案」について、「子供だましの法案だ」と批判しました。

モルロアと私たち協会は「このまま引き下がるつもりはない」として、7月2日のポリネシア核実験記念日(1966年のこの日、ポリネシア初の核実験が行われました)に向けた準備を進めています。

参考:«Nucléaire : le tribunal du travail prononce l’indemnisation des enfants d’un ancien travailleur», tahitipresse.pf, jeudi 25 juin 2009.

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